カウンター越しの事情・・『表と裏』
2005/08/15 第0014号







カウンター越しのお客様や業界内部の事情・・
現役バーテンダーが世間の表と裏を連続ドラマ風にお届けします。
楽しくて可笑しくて時には涙なくしては語れない内容や怒りモード全快バージョンにご期待ください。
汚い人間関係、不倫、友情、恋愛と様々な事情が行き交います・・
すべてノンフィクションでお届けしております。

+++ お詫び +++
サーバーの状態により稀に画像が表示しないことがありますが
本文には影響ございません。ご迷惑をおかけして申し訳ありません。
尚、配信が1週間遅れましたことを心よりお詫び申し上げます。





第0014話  『 シェフとの戦いにピリオド? 』


++登場人物++
(注)画像はイメージです。本人とは何の関係もございません・・

:私

:シェフ


以前、どうしようもないシェフの話をさせていただいたが・・

つい先日、終戦を迎えた・・






かも?


ある日、いつものように出勤した私はシェフの機嫌が悪いことに気がついていた・・

「いつものことか・・」


いろんなスタッフが次々とターゲットになっていき、
ついに私に順番が回ってきた(笑)



戦いの始まりなのである・・





メインの料理が出来上がり、私はソースを確認するためにシェフに伺った・・

「このソースは何ですか?」

「・・・・・・」



しばらくするとシェフが・・


「赤ワイン・・」


とても無愛想に、そして吐き捨てるかのように言ってきた。


私は内心腹が立ったが、ここは大人になって我慢をした・・
先ずは私の勝ち!(笑)


お客様に料理の説明をすることも接客の仕事。
厨房でわからないことがあればなんでも聞きなさいと
言っていたシェフなのに、答えがこれ?


聞くこと自体が間違ってるのか?
なら聞くのをやめよう・・


と、決めた。




次のメイン料理があがるころ・・
戦いもメインとなった。




先ほどの決意どおり、今度は何も聞かず料理を運び出した・・


いつもの内容に、一部変更された食材が加えられていたらしい。



でも、あえて聞かずに持って行った・・





でもそれでお客様に迷惑をかけてはなにもならない・・
キチンと料理名を伝え、自分の持ってる知識を提供した。



私がキッチンへ戻るころ、シェフもこちらへ向かってきた。





戦場は、どうやら裏の廊下になりそうだ・・



「いまの料理をどのように説明した?」

「料理名だけ伝えましたが・・」

「それだけか?」

「そうですけど?」

「なぜ変更した内容を聞かない?」

「なぜ?」


私は、呆れたように首を傾げた・・



するとシェフは、ムスっとした顔をしてどこかへ消えていった・・


これで2勝・・

まぁこれは勝ち負けの問題ではない・・



あえて説明を聞くことをやめた私も大人気なかったかもしれないが、
説明を聞ける状況を崩しているのはシェフなのだ・・


しかも、その後の討論は避けようとする・・
だから何も進展しないのだ。




今日まではここで終っていた・・





が、しかし腹の虫が治まらないのはシェフだけじゃない・・
私も相当に腹がたっていた・・

普段、他のスタッフに怒ることがない私だが、今回の件は我慢できなかった。



話も聞かないまま自分だけ怒って帰ってしまったのである・・



情けない・・



私はシェフに腹立たしさよりも情けない・・と感じた。

「もう、言っても無駄だから放っておこう・・」


一瞬そう思ったが・・

ちょっと待てよ?
このままだと、またいずれ誰かが犠牲になる・・

他のスタッフで言い返せる人間は限られている・・
ほとんどの人は、理不尽な怒られ方をして終わり。


このままでは済まないな・・




あ、でも明日、私は休みだった・・(汗)


マズイ・・



その夜、一先ず家に帰り対策を練った・・
日を空けるとなにかとマズイ・・
でも、私は休み・・


でも、これはチャンスでもあるのだ。


休みを返上して次の日、ホテルへ向かった・・






いざっ!



普段誰も近づこうとしないシェフズルームへ足を運んだ・・


「シェフはおられるでしょうか?」



「シェフはもう帰ったけど?」



「え?」



私の登場が遅かったのか、シェフはすでに帰っていたらしい・・


仕方ないのでパティシエの子に、懇々と思いを打ち明けた。

「よくわかります・・」


いつもシェフの近くにいる彼らはもっと被害者かも知れません。




せっかく休みを返上して話をしにきたが、
シェフが明日来たら、カズボンが来たと
伝えてもらうことにしてその日は引き上げた・・


引き分け?いやいやまだ私が優勢である。
味方が増えたから・・



そして最終決戦の日を迎えた・・



いつものように出勤すると・・
シェフから伝言があった。

『出勤したらシェフズルームへ来い』と・・

行ってやろうじゃないの!
その日は金曜日ということもありすごく忙しい日でもあった。
しかし、他のスタッフに協力を得て・・


「行ってくるよ・・」

みんなの声援をうけながら颯爽と向かった・・



ドアを開けると、シェフが座ってる・・

「なにか言いたいことがあるのか?」

「いっぱいあります・・」

「言ってみろ!」

「わかりました」



私は、ローギヤからいっきにトップギヤに切替え話し始めた・・


「まず、昨日私がした行動は軽率であり大人気のないことをしたと思っています」

「あぁ・・」

「申し訳ありませんでした」

「おぉ・・」

「しかし・・なぜあんな行動に出たのかわかりますか?」



いままでのみんなの意見をまとめ代弁し、当然私の思いも説明した・・




内容を簡単に文章にまとめるとこうなる・・



シェフと我々の間に信頼関係はありますか?
もし少しでも信頼関係が必要と感じていただけるのであれば、
コミュニケーションは大切だと思います。


みんなに愛されるシェフであって欲しいのです。
みんなに愛されていますか?慕われていますか?

仕事以外でもみんなからいろんな相談ができるような師匠であり
上司であり先輩であり親父であり兄貴であって欲しいのです。


一つわかっていただきたいのは、昨日のことは軽率とは言え、
その瞬間に思ったことを行動にうつしたわけではありません。

日頃 私は、いろんな人からいろんな相談を受けています。
セクション関係なくプライベートな話や仕事の愚痴まで。
その愚痴の中に、やはりシェフの話し方や態度が随所に出てくるのは事実です。


なんとかしてあげたいけど、私にはどうすることもできません。
なにかできることがあるとすればこうやってアクションを起こしていくしかないのです。

当然、シェフに嫌われ、悪者にもなるでしょう・・

もちろん自分の為だけならこんなことはしていません、
自分の為なら無責任に辞めて逃げていけばいいだけなのですから。
けど、みんなの為にも私が悪者になってでもシェフと話したい・・
そんな思いから行動にでました。


キッカケはどうであれ、このように自分の思いを話せたということは
私にとっては大きな一歩です。
もちろんホテルにとっても大きな一歩かも知れません。


昨日も、私が普通に説明を聞いていたら何も事態は起きなかったでしょう・・
でも、それだといままでと何も変わらないのです。

私がみんなの思い(自分の思いも含めて)をシェフに伝えなければという思いだけで支えられています。
たとえ悪者になっても伝えてみようと思いました。
少々軽率で強引だったかも知れませんが・・



約2時間、話し続けた・・



しばらく沈黙が続いた・・







シェフは・・

「わかった・・100%全ての条件を飲むことはできないけど・・」

「ありがとうございます・・」







最後に・・







「いままで俺にここまで言ってきた奴はいない・・うれしかったぞ!」


と、言ってくれた・・


その日以来、厨房の雰囲気がガラっと変わった・・
適度な緊張はあるものの、笑い声が出てる。
いままでなら有り得ない光景である・・

そして、オードブルやデザートなんて見向きもしなかったシェフが
自ら率先して作っている・・

料理ができあがると、シェフ自らお皿を手にし
ホールスタッフと共に運んでいる・・

そして、一番ビックリしたのは・・


各スタッフに業務的とはいえ話しかけているのだ!


「ホールの状況はどんな感じ?」

「料理の出方は?」

「客層は?」


聞かれたスタッフもビックリしていた。





この雰囲気こそ私が求めていたコミュニケーションであり信頼関係なのです・・





今回の勝負!
まずは私の圧勝でした・・


いつまで続くかわかりませんが、またいつでも戦いますから・・
とシェフには伝えてある。







本日も最後まで読んでいただきましてありがとうございました。
これからもよろしくお願いいたします・・
皆様のご意見ご感想をお待ちしております。  kazubon



++++++++++ 次週予告 ++++++++++

『 怖いお客様・・ 』
非常に怖いお客様の担当がどうして私?



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++ 発行者プロフィール ++


職業1:某有名ホテルのバーテンダー
職業2:『 kazubon's land 』オンラインショップ管理人
職業3:メールマガジン発行「カウンター越しの事情…表と裏」(毎週月曜日発行)
職業4:超零細企業経営

名前:kazubon カズボン
年齢:1972/06/15
性別:♂





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